これから家庭菜園をはじめたいけどなにから準備すればいいのかわからない、家庭菜園をやってみたけど野菜がうまく育たない、という人は多いのではないでしょうか?
家庭菜園でおいしい野菜を育てるためには、まず、土作りから始めましょう。野菜をうまく育てるために欠かせないのが、フカフカとしたよい土を作ることです。
しかし、フカフカの土は、ただ土を耕すだけでは作れません。この記事では、よい土の条件と土作りの順番をくわしく紹介しています。
目次
野菜が良く育つよい土とは?
[よい土の条件]
- 水はけがよく、水もちがよい
- 通気性がよい
- 土の酸度が適正である
- 肥料分が十分に蓄えてある
- 病原菌や害虫が少ない
野菜がすくすく育つ土は、ただ耕すだけでは作れません。よい土は、「団粒構造(だんりゅうこうぞう)」と呼ばれる団子状になった土の粒が集まっています。
団粒構造には団子状の土の粒同士に隙間があるので、水が蓄えられ、適度な空気の通り道ができるのです。
一方、わるい土は「単粒構造(たんりゅうこうぞう)」と呼ばれる構造をしています。単粒構造は、細かい土の粒の集まりなので十分なすき間がなく、水を蓄え、空気を通すことに適していません。
植物が育つためには、根が元気に育つことが重要です。新鮮な空気と水が通る土を作ることで、根腐れを防ぐことができます。
また、病気や害虫の多い土、酸性に傾きすぎた土でも野菜がうまく育ちません。石灰や堆肥、肥料などを取り入れて、野菜が元気に成長できる土壌環境を目指して土作りをする必要があります。
土作り
まずは、土を耕すところから始まります。土を耕すことによって、硬くなった土がほぐされて、空気が入り、水はけも良くなります。雑草が生えている場合は、抜き取ってから作業を始めましょう。
[用意するもの]
- 除草ガマ(雑草が生えている場合)
- スコップ
- クワ
[スコップで土を起こす]
- スコップのふちに足をかけて、全体重をのせて土に突き刺します。
- 掘り起こしていきます。
- 1と2を繰り返して、畑全体を粗くほぐしていきます。
[クワで土をほぐす]
- 土を深く掘り下げるようにして、後ろに進みながら土をほぐしていきます。
- 塊になっている土は、クワの背を使って砕きます。
- 最後に土の表面を軽くならします。
土の酸度を測る
次に土の酸度を測ってみましょう。雨が多い日本では、土の酸度が酸性に傾きやすいので、野菜の栽培に適した酸度に調整する必要があります。
酸度を測る方法は、ph測定キットや土壌酸度計があります。ph測定キットは、理科の実験のように、薬品を使って色の変化によって、酸度を測る方法です。比較的安価で、ネットなどでも手に入れることができます。
土壌酸度計は、酸度計の先端を土に挿して測定します。電池がいらないものや、すぐに酸度を測れるもの、酸度以外にも土の水分量などが測れるものなどいろいろとあります。使用頻度や予算に合わせて、選んでみてください。
石灰をまく
石灰を入れて、土の酸度を適正にしていきましょう。石灰には、消石灰、苦土石灰、有機石灰などのさまざまな種類があります。それぞれ種類によって、含まれているアルカリ分の量や反応の強さが違うので、使用量や使用方法を守って正しく使いましょう。
種類 | アルカリ分の含有量 | 反応の強さ | 使用量目安(g/㎡) |
消石灰 | 60% | 強い | 100~150 |
苦土石灰 | 55%以上 | 少しゆっくり | 100~200 |
有機石灰 | 20~40% | ゆっくり | 200~400 |
[石灰をまく時のポイント]
- 石灰が風に舞って、吸い込んでしまわないように、勢いよく振りまくのはやめましょう。
- 石灰は、クワを使って土と十分に混ぜましょう。しっかりと混ざっていないと、畑の場所によってばらつきが出て、固まった石灰が野菜の根の生育に悪影響をあたえてしまいます。
- 苦土石灰を使う場合、1㎡当たり100gまくとph値は約0.5あがります。この数値を目安に、まく量を調節しましょう。
- 石灰をまいた後は、土になじませるために、1〜2週間放置してください。
苦土石灰についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。代用品や効果的な使い方に関してもご紹介しています。
苦土石灰とは?代用品や効果的な使い方までをわかりやすく解説!
土の状態を確認する
野菜は、土の中に根を張って野菜全体を支え、土の中の水分や養分を吸って育ちます。根をしっかり張ることができるちょうどよい土か調べておきましょう。
チェック方法は、雨上がりの晴れた日に土を掘って、土を握りしめるだけです。土を握りしめて、土が塊になり、指で押すとすぐに崩れる状態であれば、あとは、堆肥と肥料を補給するだけで、よい土ができます。
土を握りしめても、砂のようにサラサラで、強く握っても塊にならない土なら水もちが悪い土です。堆肥とバーミキュライトなどを補給して、保水力を高めるようにしましょう。
逆に、土を握りしめるとベタベタになり、固まったまま崩れない土であれば、排水性と通気性を高めましょう。基本的には、堆肥をまいて土をやわらかくしていきます。さらに、パーライトを入れると効果が高まります。
堆肥と肥料をまく
次に堆肥と肥料を一緒にまいていきます。まず、堆肥と肥料の役割ですが、堆肥は植物がよく育つようにするための土壌改良材として使います。
一方、肥料は植物が育つために必要な栄養分です。堆肥にも栄養分が含まれていますが、肥料に比べたらわずかなものです。必ず、堆肥と肥料をセットで補給するようにしましょう。
ただし、石灰と一緒に堆肥と肥料をまいてはいけません。石灰に含まれるアルカリ分と、堆肥や肥料に含まれるチッ素分が、反応してしまうからです。
養分として加えたはずの成分が反応することで、ガスが発生して空気中へ逃げていきます。養分がガスとなってしまうので、堆肥や肥料の効果は薄れてしまいます。
堆肥の選び方とまき方
堆肥は、牛糞やワラ、もみ殻などの有機物を集めて微生物に分解させたものです。堆肥には、肥料分はごくわずかしか含まれていないので、必ず肥料と一緒に使いましょう。
また、完熟している堆肥は無臭でサラサラとしています。においのあるものは、完熟していない証拠です。やむを得ず使用する時は、土にまいてから発酵が始まるので、栽培を始める2〜3週間は時間をおきましょう。
[主な堆肥]
種類 | 特徴 |
牛ふん堆肥 | 牛ふんをワラなどと一緒に発酵させたもの。無臭でサラサラしたものを選びましょう。 |
腐葉土 | 広葉樹の落ち葉を集めて、微生物によって発酵したもの。栄養分や水分を蓄える力が高いのが特徴です。 |
バーク堆肥 | 木の皮を砕いて、発酵させたもの。一度乾燥させてしまうと、吸水力が落ちてしまうので、乾燥させずに湿った状態で使います。 |
堆肥を使うときの量の目安
堆肥を使う量は、1㎡に4kgを目安にまきましょう。
[堆肥のまき方]
- 1㎡に2kgを目安に、完熟牛ふん堆肥をまんべんなく撒きます。
- さらに、1㎡に2kgを目安に、腐葉土を撒きます。
- 全体的によく混ざるように耕して、休ませます。
家庭菜園におすすめの堆肥
家庭菜園で使うおすすめの堆肥は、完熟牛ふん堆肥と腐葉土をあわせて使う方法です。完熟牛ふん堆肥と腐葉土を「1:1」の割合で畑にまいていきます。
牛ふん堆肥は、他の堆肥に比べて土壌改良の効果が長く続くのが特徴で、腐葉土は肥料分や水分を蓄える力が高いからです。牛ふん堆肥と腐葉土を合わせて使えば、二つの堆肥の特徴をいいとこどりできますよね。もちろん、完熟牛ふん堆肥だけでも大丈夫です。
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肥料の選び方とまき方
肥料は、野菜の成長に必要な栄養素です。肥料には、様々な種類があるので、それぞれの特徴をつかんで効果的に使うことがポイントです。
また、植物を栽培する前に土に加えておく「元肥」と、植物が育ってきてから土に加える「追肥」を使い分けます。追肥を使う理由は、雨などで肥料分が溶け出す分を補うためと、野菜の成長にともなって吸収される栄養分が変わってくるからです。
野菜の成長に合わせて、何回かに分けて与えることが重要になってきます。
植物の三要素
- チッ素(N)は、葉や茎の成長を促します。
- リン酸(P)は、花や身の成長に必要な栄養素となります。実を食べる野菜に使うと効果的です。
- カリ(K)は、根の成長を助けます。また、植物の新陳代謝を促したり、生理作用を調節したりするのに役立ちます。
化学肥料と有機質肥料
肥料には、天然鉱石などの無機物を、化学的に加工してつくった化学肥料があります。また、有機質が原料となっている有機質肥料があります。
化学肥料のメリットは、植物への効き方が速く、含まれている成分の量が安定しているという点です。デメリットは、使いすぎると土が硬くなってしまいます。
有機質肥料のメリットは、効き目がゆっくりなので、根への負担が少ないです。デメリットとしては、完全に発酵していないものは分解に時間がかかり、すぐに種まきできません。
有機質肥料に関する記事はこちら。
肥料を使うときのポイント
- 肥料は「元肥」と「追肥」を分けて使いましょう。
- 化学肥料の使い過ぎに注意しましょう。
- 有機質肥料はそれぞれの特徴を活かしながら、ブレンドして使いましょう。
培養土を畑に混ぜる時の注意点
培養土は、基本的に栽培する植物にあわせて腐葉土、バーミキュラ、砂、ピートモス、石灰などがブレンドされたものです。商品によっては、堆肥や肥料が含まれているものもあります。
畑に混ぜて使っても問題はありませんが、培養土に何が入っているのかを確認しましょう。肥料が入っている培養土を使う場合は、元肥を入れすぎないように注意が必要です。また、培養土を混ぜた後は、土の状態と酸度を確認してから、植物を栽培することをおすすめします。
花壇の土の手入れ
花壇の土を作るときも基本的には同じ工程で、土作りを行っていきます。ただし、畑とは違いスペースが限られているので、土を耕すときにクワなどの大きい農具は必要ないでしょう。
また、花壇で育てる植物といえば花がメインとなってくると思いますので、肥料は、リン酸やチッ素などの配合に注意して選ぶと良いです。
まとめ
今回は、家庭菜園の基本となる土作りについて紹介しました。よい土の条件を満たすためには、土を耕すことのほかに、植物が育つための三要素を補うことが大切です。
- 石灰をいれて土の酸度を調節する
- 堆肥をいれて硬い土をやわらかくする
- 肥料をいれる
また、石灰や堆肥、肥料にはさまざまな種類があるので、必ずしも正しい方法があるわけではありません。植物が成長していく様子をじっくり観察しながら、畑の土に合う石灰や堆肥、肥料を試行錯誤して見つけていってくださいね。