おうち時間が増える中、自然を身近に感じられる家庭菜園の人気が高まっていますね。
野菜や果物が成長していく過程を楽しめる家庭菜園は、手軽に始められることもあって趣味の一つとする人が増えています。
育てたい野菜が決まって、スコップなどの道具の準備が進んだころに気になるのが家庭菜園の用土です。
そこで今回の記事では、野菜や果物を育てるうえでとても大切な「土作り」について、家庭菜園初心者の人にもわかりやすく解説していきましょう。
土作りが上手くいくと、家庭菜園での野菜の成長が目に見えて良くなります。ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
家庭菜園での土作りが大切な理由
植物が元気に育つためには、日当たりや通風、水分に加えて「根の周りの環境」がとても大切です。野菜がすくすく成長するとき、根も地面の下でしっかり張っていきます。では、野菜を作る家庭菜園で良い土とはいったいどんな土なのでしょうか。
- 保水性
- 排水性
- 通気性
野菜が育つうえでよい土とはこの3つの条件がそろっている用土です。
育てる野菜ごとに細かく調整することも大切ですが、基本的にはこの3つの条件を満たすように土作りをしていきます。
保水性と排水性を両立できる土は「団粒構造」を保っています。
団粒構造とは
土の中に住む微生物の働きによって作られる、大小の土の塊がバランスよく混ざり合っている状態のことです。
土壌粒子同士が有機物や微生物などの働きによってくっつき小粒になったものを団粒、団粒同士がさらにくっついている状態を団粒構造と呼びます。団粒の間は通気性や排水性がよく、植物の根に酸素がいきわたります。また、団粒の隙間は根が伸び進みやすく、肥料からの栄養分もしっかりと吸収できるのが特徴です。
土作りの基礎知識
家庭菜園の土作りの大きなポイントは、団粒構造を持つ土を目指すことがわかりました。それでは、次に市販で見かける土の種類について解説していきましょう。
家庭菜園で使う土の種類
赤玉土
関東平野に降り積もった火山灰がもとになってできた関東ローム層。よく肥えた土壌として有名ですね。その関東ローム層の赤土から作られているのが赤玉土です。土の酸度を表すpHは5.0~6.0です。
赤土は乾燥させてからふるい、粒度によって「大粒」「中粒」「小粒」などに分けられます。
赤玉土は無機質な土なので、雑菌が繁殖しにくく挿し木の土としてもよく使われます。
赤玉土は使い始めは粒度を保っていますが、野菜を栽培していくうちに水やりや乾燥によって粘土質の赤土に戻ってしまうのです。そうなれば、排水性が不良になり根の周りの環境に悪影響を与えます。
鹿沼土
栃木県鹿沼地方で産出される鹿沼土も、赤玉土と同じく火山灰がもとになっている土です。
鹿沼土の最大の特徴は酸性度がpH4.0~5.0と酸性であることです。そのため、盆栽のサツキや果樹のブルーベリーなど、酸性の土壌を好む植物の栽培によく利用されています。
赤玉土と同様に無機質な土なので、雑菌が繁殖しにくく挿し木などにも使われます。
赤玉土と鹿沼土の使い分けは、育てる植物が酸性の土壌を好むかどうかで決めるようにしましょう。
ピートモス
ピートモスとは、水苔などが堆積して作られる泥炭(ピート)を原料として乾燥後に細かくしたものです。主な産地は北海道やカナダ、ロシアなどが挙げられます。
ピートモスは有機質用土の一種です。単体で用いることは少なく、保水性や保肥性を向上させるために土壌改良材として他の土に混ぜて使用することが多いのが特徴です。
また、鹿沼土と同様に酸性度がpH4.0程度と酸性なので、ブルーベリーの栽培用土の土壌改良材として使用されています。
ピートモスは酸性度を調整したものも販売されています。とても軽量なので、ハンギングバスケットにも適している用土です。
バーミキュライト
バーミキュライトは鉱物を高温で焼成して蛇腹状に膨張させ、細かく砕いた用土です。ピートモスと同じく、単体で用いられることは少なく、保水性と保温性を高める改良材として使用されています。バーミキュライトにはたくさん孔が開いていて、空気や水分、肥料などを保ってくれます。
無機質な土であるバーミキュライトは、保水性が高く清潔です。そのため、挿し木や種まき用の用土としてよく使用されます。
また、バーミキュライトの特徴の一つは、空気を蓄えて土壌が熱くなり過ぎたり、冷えすぎたりするのを防ぐ効果です。さらに、体積に対してとても軽い用土なので、混ぜることでプランター栽培の用土全体の重さを軽量化できるのも便利です。
腐葉土
腐葉土とは落ち葉や枯れ木が微生物に分解されてできる用土のことです。
よく家庭菜園初心者の人から「腐葉土と堆肥はどこがちがうの?」という質問を受けます。
腐葉土と堆肥のちがい
腐葉土の原料はほとんどが落ち葉や枯れた枝です。一方、堆肥は牛ふんや鶏ふんなど動物性の成分を含んでいます。
腐葉土は有機質の栄養をたくさん含んでいる用土です。赤玉土や鹿沼土などの無機質の土と組み合わせることで、栄養分をたっぷり含んだ用土に改良できます。また、保肥性や保水性がよいため、腐葉土を混ぜた用土では野菜の根から栄養や水分が吸収されやすくなるのが特徴です。さらに、腐葉土の中に含まれている微生物が団粒構造を作ってくれるので、土壌改良にも適しています。
腐葉土のもう一つの使い方としては、「マルチング効果」が挙げられます。家庭菜園の土の表面を腐葉土で覆うことで、雑草を生えにくくし、地面の温度変化を小さくする働きがあります。マルチングシートなどの園芸資材もありますが、腐葉土を使ったマルチもおすすめです。
黒土
黒土は赤玉土や鹿沼土と同じく火山灰由来の用土です。赤玉土よりも表層に近いところから採取される黒土には、枯れた植物が混ざっています。保水性と保肥性は高いのですが、通気性と排水性がとても悪いため黒土だけで野菜を栽培するのは難しいといえるでしょう。
肥料分がほとんど含まれておらず、花や実を育てるのに必要な「リン酸」という成分を吸着しやすい特徴があります。ふかふかとしていて根菜類の栽培には適している黒土ですが、葉菜類や果菜類の栽培に使用する場合は、他の用土と混ぜて使うのがおすすめです。
川砂
川砂とは文字通り河川の底に堆積した砂のことです。川砂も単体で野菜の栽培用土としてほとんど使われることはありません。
川砂を用土に混ぜる一番の目的は排水性の改善です。川砂には栄養分がないため、他の用土と組み合わせる改良材として家庭菜園で使用されています。
家庭菜園で使う肥料の種類
続いて家庭菜園で使う主な肥料について見ていきましょう。
野菜の成長に必要な肥料とは
野菜の成長には肥料が欠かせません。肥料の与え方や種類によって家庭菜園の野菜の成長は大きく左右されます。
家庭菜園初心者が必ず知っておきたい肥料の三大要素をご紹介しましょう。
肥料の三大要素
- チッ素(N) 葉の成長に必要な栄養素
- リン酸(P) 花や実の成長に必要な栄養素
- カリウム(K) 根や茎の成長に必要な栄養素
このように、肥料の中に含まれる成分によって効果がある部分が異なります。お店で肥料を見かけたら、三大要素の割合をチェックしてみましょう。
たとえば、葉物野菜であればチッ素成分が多めの肥料を、トマトやキュウリなどの果菜類はリン酸成分を、ダイコンやニンジンなどの根菜類の栽培にはカリウムを多く含んでいる肥料を選ぶのがおすすめです。
元肥と追肥について
元肥(もとごえ)と追肥(ついひ)も家庭菜園初心者の人には耳慣れない言葉ですね。それぞれの意味を覚えておきましょう。
- 元肥(もとごえ)
野菜などの苗を植え付ける前に用土に混ぜ込んでおく肥料です。緩やかに効果が持続するタイプの肥料が元肥には向いています。有機質肥料や緩効性の化成肥料などを使用することが多いです。苗を植え付けるときには、元肥に根が触れると傷むため注意するようにしましょう。 - 追肥(ついひ)
作物の成長に合わせて、必要な栄養分を補充するために追加で与える肥料です。すぐに肥料の栄養分が土に吸収される化成肥料や液体肥料を使用することが多いです。
有機肥料と無機肥料について
こちらも家庭菜園初心者の土作りのために必ず覚えておきたいキーワードです。
- 有機肥料
草木、油粕、鶏ふん、牛ふん、魚の骨粉など、動植物由来の肥料です。有機肥料は用土に混ぜ込むと、微生物によって分解された後、チッ素・リン酸・カリウムとして根から吸収されます。即効性はなく、肥料の効果が現れるまでに数日かかります。 - 無機肥料
地球上に存在する鉱物などを原料とした肥料です。そのまま使用する場合は無機肥料、化学的に合成したものを化成肥料と呼んでいます。
庭や畑での家庭菜園用土作り
用土と肥料の知識はしっかりと身についたでしょうか。ここからは、実際の畑や庭での家庭菜園用土作りの手順をご紹介していきます。
まず土作りに必要な園芸資材を準備します。
- スコップ
- クワ
- レーキ
- 長靴
- 園芸用グローブ
- 用土
- 元肥
- 苦土石灰
- pH試験紙または測定器
- メジャー
次に畑や庭の土の状態をしっかりと観察しましょう。観察するときのポイントは以下の通りです。
- 日当たり
- どのように利用されてきた土地なのか 田んぼとして利用されていた場合、粘土質と考えらます
- 土の質 粘土質なのかパラパラとした土なのか
- 酸性度のチェック
育てる野菜に適した酸性度に調整します。
- 酸性土壌を中和またはアルカリ性にする
苦土石灰や有機石灰を土に混ぜ込みます - アルカリ性土壌を中和または酸性にする
ピートモスなどの土壌改良材や酸性肥料を土に混ぜ込みます。
※アルカリ性土壌を中和するのは難しいため、苦土石灰のまきすぎには注意しましょう。
種まきや苗の植え付けの2週間前に元肥を施しましょう。
元肥を施す方法は大きく分けて3種類あります。
- 全面に施す
葉物野菜のように畝全体で栽培する野菜や、キュウリのような根を浅く張る野菜に適しています。 - 溝を掘って施す
畝の中央に溝を掘って肥料を入れます。トマトやナスのような深く根を張る野菜に適しています。 - 穴を掘って施す
植え付ける穴を深めに掘って肥料を入れます。カボチャなどの株と株の間が広い野菜に適しています。
畑での家庭菜園をイメージしたときに思い浮かぶのは、整然とした畝(うね)ではないでしょうか。
畝を立てる理由としては、栽培スペースと作業するための通路を分けることが挙げられます。
畝を立てることで、野菜を栽培する場所の排水性が改善される、作業効率が上がるなどのメリットがあります。
プランター菜園の土作り
ベランダや庭を利用したプランターでの家庭菜園。手軽に始められるととても人気があります。
プランター菜園での土作りの手順をご紹介しましょう。
プランター菜園の土作りに必要なアイテムを準備します。
- プラスチック素材のプランター(深さ25cm以上)
- 鉢底石
- 鉢底ネット
- スコップ
- 長靴
- 園芸用グローブ
- 用土
- 元肥
- 苦土石灰
プランター菜園でのおすすめの用土配合をご紹介します。
手軽に始めたいときには、市販で手に入る野菜の培養土を使ってみましょう。
- 葉菜類・果菜類におすすめの配合
赤玉土6:腐葉土3:バーミキュライト1+苦土石灰+元肥 - 根菜類におすすめの配合
黒土3:赤玉土3:バーミキュライト3:川砂1+苦土石灰+元肥
プランターに鉢底ネットを敷いて鉢底石を敷きます。プランターの上から7割程度まで準備した用土を入れましょう。
家庭菜園の成功には土作りが大切!
さてここまで、家庭菜園初心者が悩みやすい「土作り」について解説してきました。
ご紹介したように、家庭菜園を成功させるには丁寧な土作りが欠かせません。団粒構造を保っている家庭菜園ではまいた種や植え付けた苗から根がすくすくと成長して、健康な野菜が育ちます。
おいしい野菜を収穫するために、土作りにも気を配った家庭菜園をぜひ始めてみましょう。